綾ちゃんに会いたい

どうも、消しゴムのカスの塊、クラウンです。

綾ちゃんに会いたい。




綾ちゃん、とはかつて僕と同じ会社で働いていたいわゆる僕の部下だった女性だ。

年齢24歳。A型。

スタイルが良く、大きな目とツンと高い鼻が印象的な可愛らしい女の子だった。

初めて出会ったのは僕の部署に綾ちゃんが入社してきた2年前。

何もわからない彼女に、僕が指導役としてあてがわれた。

「よろしくお願いします。」そう言った彼女の、緊張と不安の混じったはにかむような笑顔が今でも昨日のことのように蘇る。

今思えば、その時にはもう、僕は恋に落ちていたのかもしれない。

綾ちゃんはなんでもソツなくこなすことができる才覚ある女性だった。

仕事を中途半端にすることはないし、わからないことは積極的に聞きにきて、どんどん吸収しようという姿勢が見て取れた。

それでいて活発で、時折見せる弾けるような笑顔がたまらなくキュートだった。




ある日、僕と綾ちゃんは外回りの営業に出ており、会社に戻る頃にはすでに辺りは暗くなっていた。

途中、立ち寄ったコンビニでレジに並ぶと、店員さんに向かって一人の若者が声を荒げていた。

「だから持ってねえって言ってんだろ!テメーは人を見た目で判断すんのか!」

どうやら酒やタバコを買いに来て年齢確認を求められ、激しく憤っているらしかった。

確かに若者はかなり幼く見え、成人しているとは思えない。

店員も譲るわけにはいかず、「身分証をご提示いただかないとお売りすることはできません。」の一点張り。

その問答がかなり長引き、僕たちの前に並んでいた客も品物を置いて出ていく人もいた。

僕も普段は揉め事に巻き込まれるのは嫌なので見て見ぬ振りをして出ていくタイプの人間だが、その日は、歩き疲れて正常な判断ができなかったのか、後輩女子の前でカッコつけたかったのか、あろうことかその若者に注意をするという無謀な行動に出た。

「あのさ、みんな迷惑してるよ。もし本当に忘れただけなら、一度取りに戻れば?」

我ながら、なぜこんな身の程知らずな行為に出たのか、いまだに理解できない。

すかさず若者は「なんだテメー!カンケーねーだろ!!」と僕に食いかかってきた。

情けないことに自分から注意しておいて、言い返されたらビビって何も言えない。

すると突然、僕の後ろにいたはずの綾ちゃんが目の前に飛び出してきた。

「あなた、いくつ?本当に成人してるなら言えるでしょ?平成何年生まれ?干支は?西暦は?答えなさいっ」

何が起こったのか一瞬わからなかった。

周りの誰もが予想だにしなかったのか、その場の空気が一瞬止まった。

そしてすぐに若者が、「・・・っなんだこいつ、気持ち悪りぃ!アホか!死ね!」と悪態をついてバツが悪そうに店を出て行った。

 

買い物を済ませ、帰り道、僕たちはなんだか、普段と違う一面を見せた気まずさからか、お互い考える間を作らせないように矢継ぎ早に喋り続けた。

「怖かったぁ〜!私、なんであんなに熱くなっちゃったんだろ」

「普段あんなこと絶対言えないです!」という綾ちゃん。

「でも、クラウンさん、意外と男らしいんですね」と言って笑う綾ちゃん。

街灯が照らす夜道が、

この心地よい胸の高鳴りが、

このままずっと続けばいいのに、と思った。

怖い思いを共有した、「吊り橋効果」ってやつか。

それともこの、僕の隣にいる魅力的すぎる生き物のせいか。

多分、後者だ。



「その時」は突然訪れた。

去年の春、部署再編の人事異動で、僕は違う部署に配属された。

今までと違う環境。

今までと違う仕事。

今までと違う景色。

無論、そこに綾ちゃんはいない。

でも、僕はへこたれなかった。

今までのように綾ちゃんと同じ空間で仕事ができなくても、僕たちはすでに、顔を見ればお互いどちらからともなく話しかけられるほどの関係になっていた。

たとえ部署は違えども、資料室や会社の至る所で接することはできる。

その「擬似遠距離恋愛」とでもいうべき距離感が、僕のモチベーションになった。

気づけば季節は梅雨が明け、夏本番が訪れようとしていた。

ある寝苦しい夜、一通のライン通知が携帯を震わせた。

綾ちゃんからだ。

その内容に、さっきまで蒸し暑くじっとりと汗をかいていた体から一気に血の気が引いた。

「実家の母が病で倒れ、父の仕事を手伝いながら看病することになり

会社を退職することになりました」

 

僕は、

「大変だね。。。」

とだけ、返事をした。



綾ちゃんは、8月の終わりに実家の愛媛に帰ることになった。

あれから、一度社内で会話した以来、ラインも、会話もしていなかった。

まだ、僕の前から綾ちゃんがいなくなってしまうという現実を、僕は受け入れられずにいた。

綾ちゃんのいる部署では、8月の最終週にささやかな送別会という名目の飲み会が催されることになった。

その日は、近くの河川敷で花火大会が行われる日だ。

部署が違う僕には、そこに呼ばれる道理もない。

その当日、僕は、見たくない現実から目を背けようとするかのように仕事をした。

誰よりも遅くまでオフィスに残り、時間を忘れようと、普段なら明日の僕に任せるような時間のかかる作業も進んで取り組んだ。

オフィスから人気がなくなってしばらくした頃、携帯が鳴った。

ライン。ロック画面のまま、通知だけ読む。

綾ちゃん。

「花火見に来ませんか」

 

どこに?

なんで僕に?

みんなは?

綾ちゃん

なんでいなくなっちゃうの?

 

『どこにいるの?』

 

「会社から一番近い河川敷の階段のとこにいます」

 

『とりあえずいくよ』

 

仕事を切り上げ、河川敷へ向かった。

 

どんな顔して会えばいいのか、わからなかった。

 

河川敷の近くまでくると、もう花火も終盤なのか、人がまばらに歩いていた。

 

『階段のとこ、ついたよ』

 

「降りて右の、屋根のあるベンチにいます」

 

階段を駆け下り、ベンチに目を向けると、一人だけ、綾ちゃんが一人だけ座って花火を眺めていた。

 

歩調が、早いのだろうか、遅いのだろうか。

僕は今、どんな顔してる?

 

「お疲れ様。」と声をかけた。

 

「みんな、まだ飲み足りないって言うから。」

と綾ちゃんは言った。

 

隣に腰をおろし、一呼吸ついた。

 

何を、話せばいいのだろう。

 

「お母さん、大変・・・」当たり障りのないことを口にしようとした瞬間、綾ちゃんが遮るように喋り出した。

「私ね、」

「本当は実家帰りたくないんです。」

 

「お母さん、そんなに危篤な状態じゃないし、お父さんがずっと『こっちで結婚しろ』って前から言ってて、それで、いい口実にして私を実家に戻そうとしてるの」

 

周りの喧騒が、まるでヴェールを一枚隔てた向こう側にように少し遠くに聞こえる。

 

どういうことなんだ。

なぜそれを僕に

なぜこのタイミングで?

 

「なんでそんなこと、僕に・・・」

 

心の、僕の想いの雫が、溢れた。

 

「私、クラウンさん。私は・・・・・・」

最後の花火が盛大に打ち上がったその瞬間、「おおーっ」と歓声が大きくなり、綾ちゃんのか細い声がかき消された。

 

「え?今、なんて言ったの」

 

「・・・・・・・なんでもない」

 

そう言って、綾ちゃんは久しぶりに僕の目を見た。

 

少しだけ悲しそうに、微笑んでいた。

 



それからすぐに、綾ちゃんは実家の愛媛へ引っ越していった。

しばらくして、僕の自宅に一度だけ、綾ちゃんからみかんが送られてきた。

 

僕は、相変わらず同じ毎日を繰り返している。

 

綾ちゃんとのラインは、まだ消してない。

 

綾ちゃん、あの時

なんて言ったの?

 

もし叶うなら

もう一度

 

君に会いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイここでまさよし!!!

完っ全にここでまさよしのいつでも探している歌!!!!

路地裏とか探す歌!!

 

なんだこれ!?

なんだこのラブコメ!!?

 

俺だぞ!?

クラウンだぞ!?

これだぞ!?

これ↓

 

ねーよそんなエピソード!!!!

調子のんな!!!

 

 





カテゴリーDays